
「最近よく聞く動画広告、始めてみたいけど何から手をつければいいかわからない…」 「自社のサービスをもっと多くの人に知ってもらうには、動画広告が効果的って本当?」
Webマーケティングに携わる中で、このような疑問や期待をお持ちの方は多いのではないでしょうか。スマートフォンの普及と通信環境の進化により、私たちの生活に動画コンテンツはすっかり溶け込んでいます。それに伴い、Web広告の世界でも「動画」の活用が急速に進んでいるのです。
実際に、サイバーエージェントの調査によると、2023年の国内動画広告市場は6,253億円に達し、2027年には1兆円を超える規模にまで成長すると予測されています。このデータからも、動画広告が単なる一過性のトレンドではなく、今後のマーケティング戦略において不可欠な要素であることがわかります。
この記事では、そんな注目度の高い動画広告について、今さら聞けない基礎知識から、具体的な種類、費用、成功事例、そして成果を出すための作り方まで、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説していきます。
この記事を最後まで読めば、動画広告の全体像を体系的に理解し、自社のマーケティング活動に活かすための第一歩を踏み出せるはずです。
動画広告とは?- 今さら聞けない基本を解説
まずは、動画広告の基本的な定義と、なぜこれほどまでに注目されているのか、その背景から見ていきましょう。
動画広告の定義
動画広告とは、その名の通り「動画(映像と音声)」をクリエイティブとして使用するWeb広告全般を指します。YouTubeの動画の合間に流れるCMのような広告や、SNSのタイムラインに表示される広告などが代表的です。
テキストや静止画(バナー)広告と比べて、動きや音、ストーリー性を加えることができるため、短時間で多くの情報を伝え、ユーザーの感情に訴えかけやすいのが大きな特徴です。
なぜ今、動画広告が注目されるのか?市場規模の拡大
動画広告市場が急成長している背景には、私たちの情報収集の仕方の変化が大きく関わっています。
- 5Gの普及とスマートフォンの高性能化:いつでもどこでも、高画質な動画をストレスなく視聴できる環境が整いました。
- 動画プラットフォームの台頭:YouTubeやTikTokをはじめとする動画共有サービスが、年代を問わず多くの人々の可処分時間を獲得しています。
- SNSの動画対応強化:InstagramのリールやX(旧Twitter)など、主要なSNSが次々とショート動画機能を拡充し、動画コンテンツが日常的に消費されるようになりました。
このような環境の変化を受け、企業もユーザーとの接点を動画に求めるようになりました。その結果、前述の通り市場規模は右肩上がりに拡大を続けており、今後ますます重要なマーケティング手法となっていくことは間違いないでしょう。
動画広告のメリットとデメリットを徹底比較
多くの企業が導入を進める動画広告ですが、もちろん良い面ばかりではありません。ここで、メリットとデメリットを正しく理解し、自社の状況と照らし合わせて導入を検討することが重要です。
動画広告の5つの大きなメリット
- 視覚と聴覚に訴えかけ、多くの情報を伝えられる 人間が情報を得る際の五感の割合は、視覚が87%、聴覚が7%と言われています。動画広告は、この二つに同時にアプローチできるため、テキストや静止画に比べて圧倒的に多くの情報を、より直感的に伝えることが可能です。商品やサービスの複雑な仕組みや、使い方のイメージなどもリアルに表現できます。
- ストーリー性で記憶に残り、心を動かせる 単に事実を羅列するよりも、ストーリー仕立てで伝える方が、人の記憶に残りやすいことが分かっています。ある研究では、ストーリーを用いると記憶への定着率が22倍も高まるという結果も出ています。共感を呼ぶストーリーはユーザーの感情を揺さぶり、商品やブランドへの好意度を高め、購買意欲を刺激します。
- SNSでの拡散(シェア)が期待できる 面白い、感動した、役に立ったと感じた動画は、SNSで「シェア」されやすい傾向があります。ユーザーの手によって情報が拡散されることで、広告費をかけずに多くの人へリーチできる可能性があります。いわゆる「バズ」が生まれれば、想定をはるかに超える認知度拡大につながることもあります。
- ターゲティング精度が高く、効果検証がしやすい Web広告の大きな利点ですが、動画広告もユーザーの年齢、性別、興味関心、地域など、詳細なターゲティングが可能です。届けたい相手に絞って広告を配信できるため、無駄なコストを抑えられます。また、再生回数やクリック数、視聴完了率などのデータを詳細に分析できるため、客観的な効果測定と改善がしやすい点もメリットです。
- 低予算からでも始められる テレビCMと異なり、多くの動画広告プラットフォームでは、少額の予算からでも出稿が可能です。テスト的に配信してみて、効果を見ながら予算を調整するといった柔軟な運用ができるため、中小企業でも挑戦しやすいと言えるでしょう。
押さえておくべき2つのデメリット
- 制作に費用と時間がかかる テキストやバナー広告に比べ、動画広告は企画、撮影、編集といった工程が必要になるため、制作コストと時間がかかります。外注する場合、簡単なアニメーション動画でも数十万円、実写でクオリティを求めると数百万円以上かかることもあります。また、制作期間も1ヶ月〜3ヶ月程度を見込む必要があり、すぐにプロモーションを開始したい場合には不向きなケースもあります。
- 動画のクオリティが低いと逆効果になる恐れがある 情報量が多い分、動画の質が低いと、かえって企業やブランドのイメージを損なうリスクがあります。「安っぽい」「何を伝えたいかわからない」といったネガティブな印象を与えてしまうと、ユーザーの離脱を招くだけでなく、ブランド毀損にもつながりかねません。
動画広告の主な種類を理解しよう
動画広告は、配信される場所や形式によっていくつかの種類に分けられます。ここでは代表的なものを解説します。
動画コンテンツ内に配信される「インストリーム広告」
YouTubeなどで動画を視聴している際に、本編の前後や途中に再生される広告です。テレビCMに最も近い形式と言えます。再生されるタイミングによって、さらに3つに分類されます。
- プレロール広告:動画本編が始まる前に再生されます。最も視聴されやすいのが特徴です。
- ミッドロール広告:動画本編の途中に再生されます。長尺の動画で採用されることが多く、離脱されにくい傾向があります。
- ポストロール広告:動画本編が終わった後に再生されます。コンテンツに満足したユーザーが視聴するため、商品購入などのアクションにつながりやすいとされています。
WebサイトやSNSの広告枠に表示される「アウトストリーム広告」
動画コンテンツ以外の場所に表示される広告です。Webサイトのバナー広告枠や、SNSのタイムライン、記事のコンテンツ内などに配信されます。
- インバナー広告:Webサイトの広告枠(バナー)内で再生される動画広告です。動画メディアを普段見ないユーザー層にもアプローチできます。
- インリード広告(インフィード広告):SNSのタイムラインやニュースアプリの記事一覧など、コンテンツとコンテンツの間に表示される広告です。周囲の投稿に溶け込むように表示されるため、ユーザーに自然な形で見てもらいやすいのが特徴です。
短時間で強い印象を残す「バンパー広告」
YouTubeで利用できる、再生時間が6秒以内でスキップできない形式の広告です。短時間で繰り返しメッセージを伝えることに特化しており、商品名やブランドの認知度を向上させたい場合に非常に効果的です。
主要な動画広告の配信先プラットフォーム6選
では、具体的にどこに動画広告を出稿できるのでしょうか。ここでは、主要なプラットフォームとその特徴をご紹介します。
YouTube
言わずと知れた世界最大の動画プラットフォーム。月間アクティブユーザー数は国内で7,120万人以上(2023年5月時点)と、圧倒的なリーチ力を誇ります。年齢・性別を問わず幅広い層が利用しており、詳細なターゲティングも可能です。インストリーム広告やバンパー広告など、多様な広告フォーマットが用意されています。
X(旧Twitter)
リアルタイム性と拡散力の高さが最大の特徴。二次拡散(リツイート)による情報の広がりが期待でき、新商品やキャンペーンの告知と相性が良いプラットフォームです。若年層からビジネス層まで、幅広いユーザーが利用しています。
ビジュアル重視のSNSで、特に女性や若年層の利用者が多いのが特徴です。美しい世界観や「インスタ映え」するクリエイティブが好まれます。フィード、ストーリーズ、リールなど、掲載面が豊富で、ECサイトとの連携も強いため、アパレルやコスメ、食品などのプロモーションに効果的です。
実名登録制のため、ユーザー情報の信頼性が高く、ターゲティング精度が非常に高いのが強みです。30代〜50代のビジネスパーソン層の利用が多く、BtoB向けの商材や、高価格帯の商品・サービスとの相性が良いとされています。Instagramへの同時配信も可能です。
TikTok
10代〜20代の若年層を中心に絶大な人気を誇るショート動画プラットフォーム。トレンドの移り変わりが早く、ユーザー参加型のハッシュタグチャレンジなど、エンゲージメントを高める独自の広告メニューが特徴です。若者向け商材の認知拡大やブランディングに適しています。
LINE
国内月間ユーザー数9,500万人以上(2023年6月末時点)という圧倒的なユーザー基盤を持つコミュニケーションアプリ。LINE NEWSやLINE VOOM(旧タイムライン)など、日常的に利用するサービス内に広告を配信でき、幅広い年齢層にアプローチできます。
気になる費用は?制作費と出稿費の相場を解説
動画広告を実施する上で、最も気になるのが費用面でしょう。動画広告の費用は、大きく「制作費用」と「出稿費用(広告配信費)」の2つに分けられます。
動画広告の「出稿費用」の仕組みと相場
広告を配信するための費用で、多くは「運用型広告」という形式が取られます。これは、あらかじめ決まった広告費を支払うのではなく、広告の表示回数やクリック数などに応じて費用が発生する仕組みです。
主な課金形式は以下の3つです。
- CPM(Cost Per Mille)課金:広告が1,000回表示されるごとに費用が発生。認知度向上目的のキャンペーンでよく使われます。
- CPC(Cost Per Click)課金:広告がクリックされるごとに費用が発生。Webサイトへの誘導など、具体的なアクションを促したい場合に有効です。
- CPV(Cost Per View)課金:動画広告が一定時間以上再生されると費用が発生。動画の内容をしっかり見てほしい場合に適しています。
成果を出すための動画広告の作り方【7ステップ】
ただ動画を作って配信するだけでは、期待する効果は得られません。戦略的に進めるための7つのステップをご紹介します。
- 目的を明確にする 何のために動画広告を出すのかを最初に決めます。「新商品の認知度を上げたい」「ブランドイメージを向上させたい」「Webサイトからの問い合わせを増やしたい」など、目的によって作るべき動画の内容や評価すべき指標が変わってきます。
- ターゲットを具体化する 誰にその広告を届けたいのか、ターゲット像を具体的に設定します。年齢、性別、職業、趣味嗜好、抱えている悩みなどを細かく描くことで、ターゲットの心に響くメッセージや表現方法が見えてきます。
- 成果目標(KPI)を設定する 目的を達成できたかどうかを測るための具体的な数値目標(KPI)を設定します。例えば、認知度向上なら「表示回数100万回」、問い合わせ獲得なら「コンバージョン数50件」といった具合です。
- 配信先を選定する 設定したターゲットが最も多く利用しているプラットフォームはどこか、という視点で配信先を選びます。媒体によって動画の最適な長さやフォーマットが異なるため、制作前に決めておくことが重要です。
- 動画広告を制作する ここまでの準備をもとに、いよいよ動画を制作します。コンセプトを固め、ターゲットに伝えたいメッセージを盛り込んだ構成案(絵コンテ)を作成し、撮影・編集へと進みます。最初の数秒でユーザーの心を掴む「冒頭のインパクト」が非常に重要です。
- 配信して効果検証をする 完成した動画をプラットフォームに入稿し、配信を開始します。配信後は、設定したKPIが達成できているかを定期的にチェックします。管理画面から再生回数やクリック率などのデータを確認し、現状を把握しましょう。
- PDCAサイクルによる改善 効果検証の結果をもとに、改善策を考え、実行します(PDCAサイクル)。「動画の冒頭を変えてみる」「ターゲット設定を見直す」「広告文を修正する」など、さまざまなテストを繰り返すことで、広告効果を最大化していくことができます。
【目的別】動画広告の成功事例4選
最後に、実際の企業がどのように動画広告を活用して成功しているのか、目的別の事例をご紹介します。
【認知拡大】MRT株式会社様:サービス名を覚えてもらう工夫
看護師向け転職サービス「MRTナースバンク」の認知拡大を目指した事例。サービス名の「MRT」を覚えてもらうという課題に対し、「MaRutTo(まるっと)」というキャッチーなフレーズで、手厚いサポート内容とサービス名をかけてアピール。ユーザーに親しみやすく、記憶に残りやすい動画広告で認知度向上を図りました。
【認知拡大・リード獲得】株式会社ユニリタ様:課題提起で興味を喚起
ITサービスマネジメントツール「LMIS」の認知拡大事例。決裁者層をターゲットに、タクシー広告なども併用して配信。「あなたの会社にLMIS、ありますか?」と問いかけ、LMISを知らないことへの不安を煽るストーリーで、サービスの必要性を強く印象付けています。
【採用促進】日東紡績株式会社様:意外性で惹きつける
大手繊維メーカーである同社の採用促進を目的とした事例。「ニット帽?」という、社名(日東紡)と聞き間違えやすい言葉から動画を始めることで、視聴者の「ん?」という注意を引きつけます。そこから事業内容を分かりやすく紹介し、企業への興味関心とエントリーへとつなげる巧みな構成です。
【サービス理解促進】エニワン株式会社様:コント形式で課題を自分ごとに
建設業向けの業務管理システム「AnyONE」のプロモーション事例。建設業界でよくある課題をコント形式で面白おかしく表現することで、ターゲット層の共感を獲得。アニメーションを用いることで、難しいサービス内容も親しみやすく伝え、サービスの理解促進と認知拡大を両立させています。
まとめ
この記事では、動画広告の基礎知識からメリット・デメリット、種類、費用、成功事例までを網羅的に解説しました。
- 動画広告は市場が急成長しており、今後のマーケティングに不可欠。
- 多くの情報を伝え、ユーザーの感情に訴えかけられる強力なメリットがある一方、制作コストやクオリティ管理といった課題もある。
- 成功のためには、「目的」と「ターゲット」を明確にし、戦略的に制作・運用していくことが何よりも重要。
動画広告は、もはや一部の大企業だけのものではありません。プラットフォームが多様化し、低予算からでも始められるようになった今、あらゆる企業にとって強力な武器となり得ます。
いきなり大規模な予算を投じるのが不安な方は、まずはこの記事で紹介したような少額から始められるSNS広告などでテストマーケティングをしてみてはいかがでしょうか。自社のサービスや商品の魅力を、動画という表現力豊かなフォーマットに乗せて、まだ見ぬ未来のお客様へ届けてみましょう。
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