「時間をかけて動画を作ったのに、なぜか最後まで見てもらえない…」 「結局、何が伝えたかったのか分からないと言われてしまった…」
映像クリエイターや企業のマーケティング担当者として、このような悩みを抱えていませんか？
その原因は、もしかすると「動画構成」にあるかもしれません。
動画制作というと、つい派手なエフェクトや美しい撮影技術に目が行きがちですが、視聴者の心を掴み、期待する行動（商品の購入、ブランドの認知、問い合わせなど）を引き出すためには、その土台となる「構成」が何よりも重要です。
構成とは、動画制作における「設計図」そのもの。この設計図がしっかりしていなければ、どれだけ良い素材を集めても、視聴者には伝わらない「よく分からない動画」になってしまいます。
この記事では、数々の動画制作に携わってきた「Trend Ship」が、なぜ動画構成がそれほど重要なのか、そして成果につながる動画構成はどう考え、どう作っていけばよいのかを、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。
最後まで読めば、あなたの動画が「見られる動画」から「心を動かす動画」へと変わるヒントがきっと見つかりますよ。
なぜ動画構成がこれほど重要なのか？
動画構成の良し悪しが、動画の成果を左右すると言っても過言ではありません。では、なぜ構成はそこまで重要なのでしょうか？主な理由は3つあります。
視聴者の「見る理由」を作り、「離脱」を防ぐため
現代の視聴者は非常に忙しく、シビアです。動画の冒頭数秒で「この動画は自分にとって有益か、面白いか」を判断し、そうでなければすぐに離脱してしまいます。
しっかりとした構成は、視聴者の「なぜこの動画を見るべきか？」という問いに明確な答えを提示します。冒頭で心を掴み（フック）、中盤で飽きさせない展開を用意し、最後まで見る理由を提供し続ける。この視聴者の感情の流れを設計するのが、構成の最も大切な役割です。
メッセージを「伝わる」形に整理するため
あなたが動画で伝えたいことは何でしょうか？「商品の魅力」「ブランドの想い」「サービスの利便性」…色々あるかもしれません。しかし、それらを無秩序に詰め込んでも、視聴者の記憶には何も残りません。
構成とは、いわば情報の「交通整理」です。最も伝えたいメッセージを核（コア）に据え、情報を伝える順番、優先順位を決め、視聴者がストレスなく理解できる流れを作り上げます。構成が練られていれば、複雑な内容でも驚くほどスムーズに「伝わる」ようになります。
制作プロセスを効率化し、「手戻り」をなくすため
動画制作は、ディレクター、カメラマン、編集者など多くの人が関わるチーム作業です。もし「設計図」である構成が曖昧だったらどうなるでしょうか？
「どんな映像を撮ればいいか分からない」「編集してみたら、伝えたいことと違った」「必要なカットが撮れていなかった」…といった問題が必ず発生します。
構成を事前にしっかり固めておくことで、制作チーム全員が「完成形のイメージ」を共有できます。これにより、撮影の撮り漏れや編集の大幅な手戻り（修正）を防ぎ、結果として制作の工数、時間、そしてコストの削減に直結するのです。
成果につながる動画構成の「5つの考え方」
では、実際に「成果の出る」構成は、どのような考え方に基づいて作ればよいのでしょうか。私たちが最も大切にしている5つの原則をご紹介します。
考え方1：動画の「目的」と「ターゲット」を研ぎ澄ます
構成を考え始める前に、必ず明確にしなければならないのが「誰に (Target)」「何をしてほしい (Goal)」かです。ここが全ての土台となります。
例えば、目的が「新商品の認知拡大」であれば、とにかく多くの人にブランド名と商品の特徴を覚えてもらうため、キャッチーで分かりやすい構成が必要です。
一方、目的が「購入（コンバージョン）」であれば、ターゲットが抱える悩みに寄り添い、その商品がいかに悩みを解決できるかを論理的に説明し、最後に行動を後押しする構成が求められます。
この「目的」と「ターゲット」が曖昧なまま進めると、必ず軸のブレた動画になってしまいます。
考え方2：「どこで」見られるかを徹底的に意識する
その動画は、どのプラットフォームで視聴されますか？ YouTubeでしょうか、それともTikTokやInstagramのリールでしょうか。あるいは、自社のWebサイトでしょうか。
視聴する場所（掲載先）によって、最適な動画の長さ、テンポ、視聴者の心の状態は全く異なります。
- TikTokやInstagramリール: 隙間時間に見られるため、冒頭1〜2秒で強いインパクトを与え、テンポ良く情報を展開する必要があります。
- YouTube: ある程度時間をかけて情報収集する目的で見られることが多いため、冒頭15秒で「この動画を見るメリット」を提示し、じっくりと解説する構成も有効です。
- 自社サイト: すでにブランドに興味を持っている可能性が高いため、商品の世界観や開発ストーリーを深く伝える、少し長めの構成も受け入れられます。
このように、掲載先の特性に合わせて構成を最適化することが不可欠です。
考え方3：視聴者の「感情」を動かすストーリー
人は、単なる情報の羅列では心を動かされません。情報を受け取り、理解し、そして「感情」が動いたときに初めて、記憶に残り、行動に移します。
あなたの動画構成には「ストーリー」がありますか？ 視聴者が主人公に共感したり、問題が解決していくプロセスにワクワクしたり、未来への期待を感じたりするような、感情の起伏を設計することが大切です。「起承転結」は、そのための最も基本的な型の一つです。
考え方4：伝える情報は「一つ」に絞り、冗長さを削ぎ落とす
マーケティング担当者ほど、「あれもこれも伝えたい」という罠に陥りがちです。しかし、「全部入り」の動画は、結局「何も伝わらない」動画になってしまいます。
1つの動画で伝えるべき核となるメッセージは、原則「1つ」に絞り込みましょう。そして、そのメッセージを伝えるために必要のない要素は、勇気を持って削ぎ落とします。特に専門用語の多用や、長すぎる説明は離脱の大きな原因になります。シンプルで、冗長な部分がない構成を心がけましょう。
考え方5：制作の「コスト」と「期間」も設計図に含める
構成は、クリエイティブな側面だけでなく、現実的な制作管理の側面も持っています。
例えば、「壮大なCGを使う」「海外ロケを行う」「有名タレントを起用する」といった構成は、魅力的かもしれませんが、莫大なコストと時間がかかります。
構成を考える段階で、使える「予算」と「納期（制作期間）」を常に念頭に置くことが重要です。その制約の中で、どうすれば目的を達成できるかを考えるのも、プロの構成術と言えます。
初心者でも迷わない！動画構成の作り方 4ステップ
考え方が分かったところで、次に具体的な「作り方」のステップを見ていきましょう。この4つのステップを踏めば、誰でも論理的に構成を組み立てることができます。
ステップ1：企画の核を固める（6W1H）
まずは構成の「材料」を揃えます。以下の6W1Hを使って、動画の核となる要素を明確に書き出してみましょう。
- Why（なぜ作るのか）: 動画の目的（例：認知拡大、購買促進、ブランディング）
- Whom（誰に届けたいのか）: ターゲット層（年齢、性別、悩み、興味）
- What（何を伝えたいのか）: 核となるメッセージ
- Where（どこで見せるのか）: 掲載プラットフォーム（YouTube, SNS, Webサイトなど）
- When（いつ見せるのか）: 公開タイミング、視聴シーン
- How（どのように見せるのか）: 次のステップで決める「動画スタイル」
これが曖昧だと、この後のステップ全てが崩れてしまいます。
ステップ2：動画の「スタイル」と「トーン」を決める
次に、メッセージを伝えるための「器」を決めます。
- スタイル:
- 実写: インタビュー、ドキュメンタリー、商品レビュー、ドラマ風など
- アニメーション: インフォグラフィックス（情報系）、キャラクターアニメ（親しみやすさ）、モーショングラフィックス（スタイリッシュ）など
- トーン（雰囲気）:
- コミカル、シリアス、感動的、スタイリッシュ、権威的、親しみやすい など
ターゲットやメッセージに最もふさわしいスタイルとトーンを選びます。
ステップ3：構成案（プロット）を作成する
ここからが本格的な構成作りです。いきなり映像の詳細を決めるのではなく、まずは動画全体の「流れ」をテキストで書き出します。（プロットや箱書きとも呼ばれます）
例えば、以下のように「導入」「本編」「結論」の3ブロックに分けて、それぞれで何を伝えるかを簡潔にまとめます。
- 導入（約15秒）: 視聴者の悩みに共感し、この記事で得られるメリットを提示する（掴み）
- 本編（約3分）: 悩みの原因と、それに対する具体的な解決策を3つ提示する
- 結論（約30秒）: 内容をまとめ、視聴者に取ってほしい次の行動（例：チャンネル登録、資料請求）を促す
この段階で、次に紹介する「フレームワーク」を活用すると、論理的な流れを効率的に作ることができます。
ステップ4：設計図を完成させる（シナリオ・絵コンテ）
プロットが固まったら、いよいよ詳細な「設計図」に落とし込みます。
- シナリオ:
- ナレーション、出演者のセリフ、画面に表示するテロップ（字幕）など、動画内で使用する「言葉」を全て時系列で書き出します。
- 絵コンテ（ストーリーボード）:
- シナリオに合わせて、各シーンの「映像イメージ」をイラストや写真で視覚化したものです。
- カメラのアングル（構図）、出演者の動き、シーンの秒数（尺）なども細かく指定します。
- これが制作チーム全員の「共通言語」となり、撮影や編集の精度を飛躍的に高めます。
すぐに使える！目的別・動画構成フレームワーク5選
「プロットをゼロから作るのは難しい…」という方のために、先人たちの知恵が詰まった定番の「フレームワーク（型）」を5つ、目的別にご紹介します。これに当てはめるだけで、伝わりやすい構成が驚くほど簡単に作れますよ。
1. PREP法（説得力・信頼感を出したい時に）
ビジネスシーンや解説系の動画で絶大な効果を発揮する、最も基本的な型です。結論から話すことで、視聴者の「答え」を求めるニーズに即座に応えます。
- P (Point): 結論（「〇〇が最も重要です」）
- R (Reason): 理由（「なぜなら、〜だからです」）
- E (Example): 具体例（「例えば、A社では〜という結果が出ました」）
- P (Point): 結論（「だからこそ、〇〇が重要なのです」）
2. 起承転結（ストーリーで感情を動かしたい時に）
感情移入を促し、視聴者をストーリーに引き込みたい場合に有効です。ブランディング動画や企業の紹介ムービーなどと相性が良いです。
- 起: 導入（主人公の登場、状況設定）
- 承: 展開（問題の発生、葛藤）
- 転: 転換（解決策との出会い、状況の好転）
- 結: 結論（問題解決、得られた未来、メッセージ）
3. CAMS法（視聴者に行動を促したい時に）
視聴者の共感（悩み）から入り、その解決策として商品やサービスを提示することで、自然な流れで行動を促す型です。商品紹介やサービス紹介動画に最適です。
- C (Catch): 掴み（「〜な悩み、ありませんか？」と共感を誘う）
- A (Appeal): 魅力の提示（その悩みを解決できる商品・サービスを紹介）
- M (Motivate): 動機付け（利用者の声、実績、限定オファーなどで信頼と緊急性を高める）
- S (Suggest): 行動喚起（「今すぐ資料請求」「詳しくはWebで」と具体的な行動を提案）
4. ABCDフレームワーク（Web広告で認知を取りたい時に）
Googleが推奨する、特にYouTube広告などで効果的なフレームワークです。短時間で視聴者の注意を引き、ブランドを認知させ、行動につなげることを目的としています。
- A (Attract): 注意（冒頭数秒で視聴者の関心を強く引く）
- B (Brand): ブランド（ブランド名や商品を印象的に提示する）
- C (Connect): 感情（視聴者の感情やニーズとブランドを結びつける）
- D (Direct): 行動（「購入はこちら」「詳しくはこちら」と行動を促す）
5. AIBAC（アイバック）
こちらも広告動画などでよく使われる、視聴者の購買心理に沿ったフレームワークです。
- A (Attention): 注意（視聴者の注意を引く）
- I (Interest): 興味（商品の特徴を絞って伝え、興味を引く）
- B (Benefit): 利益（視聴者が得られる具体的なメリットを提示する）
- A (Action): 行動（「今なら〇〇！」など、行動のきっかけを作る）
- C (Check): 確認（行動（購入など）が正しかったと安心させる）※Webサイト側での役割も含む
動画構成でよくある質問（FAQ）
最後に、動画構成に関してよくいただくご質問にお答えします。
Q1. 構成とシナリオ、絵コンテの違いは？
これら3つは、設計図の「詳細度」が異なります。
- 構成（プロット）: 動画全体の流れを決める「骨組み」。導入→展開→結論など。
- シナリオ: セリフ、ナレーション、テロップなど「言葉・音」に関する詳細な設計図。
- 絵コンテ: 構図、動き、カット割りなど「映像」に関する詳細な設計図。
まずは「構成」を固め、次に「シナリオ」と「絵コンテ」を作成していくのが一般的な流れです。
Q2. 適切な動画の「尺（長さ）」はどう決めればいい？
「掲載先」と「目的」によって決まります。 一概には言えませんが、一般的な目安は以下の通りです。
- TikTok / Instagramリール: 15秒〜60秒程度
- YouTube（エンタメ・情報系）: 5分〜15分程度
- YouTube（広告）: 6秒、15秒、または30秒〜数分のもの
- 企業Webサイト（サービス紹介など）: 90秒〜3分程度
重要なのは「尺ありき」で考えるのではなく、「メッセージを伝えるために最適な長さはどれくらいか」という視点で決めることです。
Q3. 1カットの目安は何秒くらい？
これも動画のテンポやスタイルによりますが、視聴者を飽きさせないためには、一般的に1カットあたり「3秒〜7秒」程度が良いとされています。
ただし、TikTokなどのテンポの速い動画では1〜2秒のカットを多用しますし、逆にインタビュー動画では話し手の表情をじっくり見せるために10秒以上カットを割らないこともあります。
まとめ
動画構成は、単なる作業工程の一つではありません。それは、視聴者の貴重な時間を預かるための「おもてなしの設計図」であり、あなたの伝えたいメッセージを、最も効果的に届けるための「戦略図」です。
どれだけ優れた撮影機材や編集ソフトを使っても、この「構成」という土台がしっかりしていなければ、動画が成果を生むことはありません。
この記事で紹介した「5つの考え方」と「4つのステップ」を参考に、まずはあなたの動画の「目的とターゲット」を明確にすることから始めてみてください。
その軸さえブレなければ、あなたの動画は必ず、視聴者の心を動かす力強いコンテンツになるはずです。
企画のヒントは、良質なインプットから生まれる この記事で学んだ知識やテクニックを、あなたの次のプロジェクトで活かしたいと思っていませんか？ しかし、優れた構成や斬新なアイデアは、知識だけでは生まれません。実際に「良い作品」に数多く触れ、インスピレーションを得ることが不可欠です。 とはいえ、Web上にあふれる動画の中から、本当に参考になる高品質な作品だけを探し出すのは、忙しい皆さまにとって大変な手間ですよね。 私たち「Trend Ship」は、そんな映像クリエイターやマーケターの皆さまのために、世界中から厳選された高品質な動画・映像作品だけを集めたギャラリーサイトを運営しています。 業界、表現手法、目的など、多彩なカテゴリから簡単に検索でき、あなたの企画書を彩るアイデアの「種」がきっと見つかります。 まずは一度、Trend Shipで、心が動かされるような作品たちに出会ってみてください。
